都会の絵の具 material abundance 2005 10 5
先日、偶然、太田裕美(歌手)が歌う、
「木綿のハンカチーフ」(作詩 松本隆 作曲 筒美 京平)
という歌謡曲を聴きました。
この歌は、当時、大ヒットした曲ですので、
中年や高齢者の方は、ご存じだと思います。
「恋人よ、僕は旅立つ」と始まる曲です。
それに対し、恋人は、こう歌うのです。
「都会の絵の具に染まらないで帰って」。
しかし、恋人の願いも、むなしく、
「恋人よ、君を忘れて、変わっていく僕を許して」、
「毎日、愉快にすごす街角、僕は帰れない」という結果に終わるのです。
最後に、恋人は、こう歌うのです。
「最後のわがまま、涙ふく木綿のハンカチーフください」。
この当時は、「都会の絵の具」に染まるのは、若い男性だけでしたが、
今では、若い女性も、「都会の絵の具」に染まってしまいます。
この当時の若い女性は、「本当の豊かさ」を知っていました。
今は、どうなったのでしょうか。
本来、精神性という点では、女性の方が、男性よりも、はるかに高いのです。
本当の豊かさとは true affluence 2005 3
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豊かさには、「物質的な豊かさ」と「精神的な豊かさ」があります。
もちろん、どちらか一方を否定するものではなく、
両者とも、バランスよく存在すべきです。
しかし、現代文明は、あまりにも「物質的な豊かさ」に偏りすぎています。
特に、今の子供や若者は、豊かさには、
「物質的な豊かさ」と「精神的な豊かさ」の両面があると理解してなく、
「物質的な豊かさが、すべてだ」と思っている雰囲気すらあります。
これは、現代文明が作り出した「精神的な病」だと思います。
「物質的な豊かさ」が持つ魔力に、すっかり取り憑かれてしまっていると言えます。
共産主義体制の崩壊で、唯物主義的な考え方も崩壊したと思っていたら、
いつの間にか、こうした唯物主義的な考え方が、再び甦り、
今の日本に広がっているのです。
つまり、「物質的な豊かさが、すべてだ」という唯物主義的な考え方が、
大きくなりつつあるのです。
しかも、問題なのは、生まれてくる子供が、次から次へと、
こうした「精神的な病」に染まってしまうということです。
この悪循環は、どこかで、何とか断ち切らないと、大変なことになってしまいます。
かつて、日本は、そして日本人は、
極めて精神性の高い国、あるいは極めて精神性の高い民族として、
諸外国に紹介されていた時もあるのです。
(唯物)
ただ物質のみが、真の存在であるとして、これを重視すること(広辞苑)。
豊かさとは true
affluence 2004 6
15
子供にとって、物質的な豊かさは、毒となります。
大人は、なぜ豊かなのか、理解できますが、
子供には、それが理解できません。
子供は、豊かであることが当然と考えるのです。
ここに不幸があるのです。
子供時代は、豊かで贅沢だったでしょうが、
それは、親の財産によって、豊かで贅沢な生活だったのです。
こうした子供が大人になると、どうなるか。
こうした子供でも大人になれば、
今度は、自分の財産によって生活をしていかなければなりません。
そうすると、子供時代に比べて、
生活が苦しい、あるいは貧乏になったと感じるのです。
このように、子供時代に、贅沢を覚えてしまうことは、
子供にとって不幸なことです。
最近は、リストラや給料カットで生活が苦しくなったため、
少子化が進行していると考える人もいるでしょう。
確かに、そのとおりかもしれない。
しかし、本質的な問題があると思います。
私の父親は、よく言います。
昔は、日本が貧かったので、食べ物がなくて困ったものだ。
毎日、食べ物のことを心配していた。
私の父親は、7人兄弟です。
7人が協力して、厳しい時代を生き抜いてきたのです。
この時代は、物質的には貧しかったでしょうが、
精神的には豊かだったのです。